世の中に巨万と出回っている加工食品だが、どのような原料を使い、それはどこの由来かをパッケージに表示しているケースは少なからずある。しかし義務付けされている品目は30数品目に過ぎず、その他大勢はメーカー側の良心に頼る要素が多く、表示の基準もバラバラで、かえって消費者を惑わす例すらあった。
この度のTPP国会批准に対応して、今まで以上に国内産の食品を買ってもらおうという農家や生産者と、安全な国内産を買いたいという消費者の思いが一致し、農水省と消費者庁が中心となって、加工食品の原料原産地表示の新しいルールが検討されることとなった。問題は加工業者や流通業者が技術的に可能な表示になるかどうか、そして消費者に分かりやすい表示になるかどうかである。
現在のところ次のような提案が有力である。
①全ての加工食品について重量割合上位1位の原料の原産地を義務表示の対象とする。例:豚肉(アメリカ、カナダ、その他)など。
②時により輸入国が変更される可能性ある食品は可能性表示とする。例:豚肉(アメリカ又はカナダ又はその他)など。
③輸入品(3ヶ国以上)と国産を混合して使う場合、重量割合の高いものから表示する大括り表示とする。例:豚肉(輸入、国産)など。
④時により輸入品と国産の重量が変化する可能性がある場合、可能性+大括り表示とする。例:豚肉(輸入又は国産)など。
⑤対象原材料が中間加工原材料である場合、その製造地を表示できる。
例:和菓子の場合の製あん(国内製造)など。
これらの基準に従って、全ての加工食品の原料原産地の表示を義務付けるものである。
消費者団体からは、④では世界のあらゆるところから原料が来ていることとなり、何も書いていないに等しいとの批判や、⑤を認めると輸入国を隠すために、国内で簡単な加工をして誤魔化すケースが増えるのではないかとの懸念も示されている。これらに対しては真摯に耳を傾け、より良い方法を検討して行かなければならない。
まだまだ課題は残るが、消費者の食品選びにおける情報が、飛躍的に増えることは間違いない。また国産原料を好む消費者が増えれば、国内農業の活性化にもつながるはずだ。あとはこれらの表示をどう活用するか、消費者の智慧と消費者教育の充実に委ねられる。