日本銀行が政策決定会合で、5対4の僅差で史上初めてマイナス金利導入を決めてから、間もなく2週間になる。アベノミクス推進の最も有効な手段が金融緩和であり、これまでの複数回の緩和により、円安、株高にに影響を与え、底上げ路線は成功したかのように見える。
今年に入ってから中国や新興国の景気減速が顕著となり、東京の株価も下がり続けている。デフレに戻りかねない状況を打開するため、日銀は新たな金融緩和のタイミングを図っていたが、マイナス金利はサプライズだった。
低金利の延長線上には、当然マイナス金利という選択肢もあるはずだが、何しろ日本市場では初めての経験であり、戸惑いを持って受け止められた。金利支払いにおいて、貸し手と借り手の立場が逆転することは、心理的な影響少なくない。また「ここまでやらなきゃダメなの」といったマイナスのシグナルを、市場に与えてしまったかもしれない。
銀行は日銀に一定の準備金を預ける制度になっているが、これまでは金利を受け取っていたものが、逆に取られることになり、日銀には預けたくない。勢い市中にマネーが出回るために、新たな投資が喚起されれば底上げにつながるところだが、実際は投資先が見つからない。一方で比較的安全な資産で、金利が見込める日本国債にマネーが集中して行く。
日本国債を手に入れるためは日本円が必要で、これが最近の円高を生んでいるとも言える。日米間の金利差は明らかアメリカに有利で、ドルを保有する方が得なはずだが、日本国債を買うためのドル売り、円買い圧力の方が数段上になっているようだ。
円高は明らかに輸出産業に打撃を与え、株価を下げ、アベノミクスを支えていた企業の収益を目減りさせる。背水の陣である金融緩和が、逆に景気の足を引っ張るという皮肉な結果になりつつある。
今回のマイナス金利導入は、やはりタイミングよくなかったのではないか。日本を取り巻く中国や新興国の景気減速、エネルギー価格の低迷、さらには新規投資の投資先が容易には見つからないという現状では、どうしてもマネーは国債に流れてしまう。海外要因が大き過ぎたことと、国内の投資環境が未だ整っていないことが原因である。
今後はなんとしても円安を続け、海外に流出した生産部門を少しでも国内に戻し、企業収益も給与アップや設備投資に出来るだけ回すような努力を続けなければならない。