第三部 外交を変える 第十一章 新しいアジア政策を考える 「核不保有」を外交の武器に その方法として、一つは、南北双方に核燃料再処理施設の保有を放棄させなければならない。もちろん、日本との間で、これは不平等となる。日本は持てるのに、なぜ朝鮮半島ではダメなのかという反発はあるだろう。 しかし、前科のある者は疑われる。かつて核保有に走った国は、いつなんどき再び核保有に走らないとも限らない。そう考えると、不平等であっても、核燃料再処理施設は持たないでいてもらった方がよい。 その分、日本が協力することになる。たとえば、核燃料の再処理が必要なら、核燃料の一種のサイクルセンターを、単に日本のためだけではなく、北東アジアあるいは東アジア地域のために建てるのである。 もちろん、高度な技術力を持つ韓国には不満が残るだろう。しかし、韓国が持てば、北朝鮮が黙っていない。今後、いかに北朝鮮が姿勢を転換しようと、いつ豹変するかもわからない。そのためにも、韓国には当面、我慢してもらうほかない。 また、関連して、日本が何らかの犠牲を払う必要があるとすれば、朝鮮半島の非核化と日本列島の非核化をワンセットにする、という制度化も考えられる。もちろん、現在すでに非核三原則があり、それで十分だという考え方もある。しかし、多くの日本人は、核の保有はプラスにならない、だから核は保有しないということではないだろうか。あるいは、日本は被爆国である、だから持たないという情緒的な反応として核を持たない。 しかし、現実の国際社会では、核というものが外交の武器として大きな威力を発揮してている。北朝鮮が超大国アメリカをふりまわすことが出来たのも、核を武器にしたからだ。日本も、単に漠然と核を持たないというのではなく、もう少し、核を敢えて持たないということを外交の武器として活用すべきだと私は思う。 核の保有・非保有を意識的に選択し、その選択をわが国の安全保障に役立てよ、ということだ。 たとえば、朝鮮半島の非核化を制度化する代償として日本も非核化を制度化するということは、漠然と核を持たないのとは意味が違うわけである。 これは、核保有国であるアメリカ、ロシア、中国などに対しても影響力を持ちうるのではないだろうか。 私は、現在、日本政府がとっている核拡散防止条約(NPT)の無期限再延長という政策はそれでよいと思っている。もちろん、この条約は、核の保有国と非保有国間の不平等を永久に固定してしまい、核保有国の特権だけが承認される、という不平等さはある。核保有国が既得権を振りかざして、現有の核を廃棄するどころか、さらに強化するのは極めて遺憾なことである。 これらの動きを牽制し、さらに、アメリカやロシアに核軍縮あるいは核放棄の努力をしてもらうことは重要なことだ。それらを促すためにも、日本は核不保有を外交の武器にしてもよいと私は思う。
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