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< 小沢調査会の議論 >
  もう一つ、大きな動きがございました。それは、「小沢調査会」という存在でした。この「小沢」というのは、言うまでもなく小沢一郎先生です。今、自由党の党首をやっておりますけども、当時は自民党の幹事長をお辞めになって直ぐの時でした。平成3年、湾岸戦争が終わった年の夏から、自民党の中に設置されたんですね。正式な名称は「日本の国際社会における役割に関する特別調査会」という長い名前なので、座長が小沢先生でしたから「小沢調査会」と呼ばれました。私も当時、外交部会長として「小沢調査会」のメンバーになりました。さらに小沢座長から「おまえが事務局長をやれ。」と急に言われて驚きました。
  ここでの議論は今申し上げたようなPKFや、湾岸戦争のときにできた多国籍軍に何らかの形で日本も参画をすることができないだろうかと、真剣に検討したわけです。でもやはり一番ネックになったのは、先ほども言いました憲法の第9条のところです。憲法第9条では個別自衛権はもちろん認められているわけですが、集団的自衛権――自国が攻められていないにもかかわらず、同盟関係にある他の国が第三国から攻められたときは、それを助けに行けるという権利ですが、今の憲法ではそれは出来ないという解釈です。多国籍軍に日本が参加するということは、集団的自衛権を行使するということにつながります。だからどうしても憲法違反という議論になってしまいます。
  しかしながら、例えば国連憲章に定められている国連軍、これはまだ出来たことはないんですが、もし国連軍が結成されたときは、日本はそれに参加できるのかできないのか。こういう議論を我々は致しました。結論から言うと、憲法を変えなくても国連軍には参加できることを、小沢調査会では一応結論付けたのであります。なぜなら国連軍というのは、日本の意思で武力行使をするわけではない。国連の旗の下に集まった加盟国が、国連の指揮官の命令によって実力行使するのだから、「国権の発動としての」武力行使ではないという解釈でありました。
  或いはまた、集団的自衛権とは別の安全保障概念である集団的安全保障という考え方。ちょっと複雑な考え方なんですが、要するに国連という国際機関が、そこに加盟しているかつてのイラクのような悪さをする国に対して、国連全体で懲らしめるという考え方を集団的安全保障と言いまして、さっきの集団的自衛権とは別ものです。この考え方はむしろ憲法の中でも認められてるんじゃないか。だから国連軍ができたら、わが国の自衛隊が参加することは可能であるという結論を出したわけです。
  しかし当時の宮沢総理に答申を出したら、「大変面白い考え方だけれども、なお党内で更に議論を深める必要がありますね。」ということで、塩漬けにされてしまいました。残念なことでありましたけれども、そういった我々の議論が、その後のPKO参加を促進し、多国籍軍の後方支援参加の検討を一歩進めたということで、私たちは大変自負をしております。これらのことは多分、今後の防衛論議の中で大いに取り上げられていくだろうと思います。以上がこれまでの私の防衛との関わり、或いは安全保障についての様々なこの経験ということを少しお話を致しました。
  最後になりますが、これからわが国の防衛問題で課題となるところはいったい何かを、2、3点かいつまんでお話したいと思うんです。

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