小泉改革はかっこよさだけではダメ!
3番目の注文ですが、小泉さんの改革はまだ「言いっ放し」というところが多く、かっこよすぎると思うのです。個人的なパフォーマンスもいいのですが、もっとしたたかに、ドロドロしたところにも突っ込むという進め方に変えていかないといけません。例えば、特殊法人の改革があります。特命を受けた石原伸晃行革担当大臣も、必死でサンドバッグになっていますが、まだまだ手ぬるい部分があるようです。統廃合や民営化で100近くあった法人数が、80以下へと減っておりますが、特殊法人の仕事自体は、実はあまり減っておりません。看板は変わっても、中身が変わっていないのです。数を減らせ一辺倒では、役人は様々なことを分かっておりますので、看板の付け替えでごまかされる可能性が高い。
ですから、一方で、特殊法人に流れるお金、財政投融資等を一兆円減らす方策はかなり有効です。実際に流れるお金が減れば、仕事も縮小せざるを得なくなります。今回は、今までの経験を踏まえ、数を減らすことに汲汲とすることなく、実質的に特殊法人の仕事を減らしていくこと。特殊法人でなければできない仕事、民間に任せるべき仕事を洗い出し、政治家側も、その辺をぎりぎり勉強していくべきだと思います。数を減らすのが目的ではなく、民間に仕事を移していくことを要諦に、特殊法人改革を進めるべきです。
話は逸れますが、8月末に石原大臣が英国やイタリアまで、特殊法人改革の先駆例をご覧になるということで外遊されました。そこで、民営化や廃止の現場を見て勉強されたことを、テレビでコメントしておりました。しかし、改革の工程表を、本来は8月末に提出するし、遅くとも9月末までに出すといっていたわけですから、今ごろ先進地域を視察するというのは、あまりに遅すぎるのではないか。言い過ぎかもしれませんが、夏休みの延長として視察されたのではないかと思われる方も、おられると思います。マスコミも、かっこよさに流されるのではなく、今この時点で、小泉改革で進めるべきことはこれで、遅れていることはこれだと、もっとはっきりいうべきだと思います。今日は、あえて、この点を言わせていただきました。
セーフティーネットを整備せよ!
次に、4番目の注文を話します。小泉改革をどんどん進めていけば、痛みも伴います。痛みの典型は、倒産あるいはリストラにより失業者が増えるということ。失業率がアップすることはやむを得ないことです。ですから、セーフティネット(安全網)を政府として、責任を持って用意することは当然必要です。改革が「厳しさ」であるなら、セーフティネットは「やさしさ」ということになります。小泉改革をうまく進めるためには、厳しさとやさしさのバランスをうまく取っていく必要があります。セーフティネットで議論されていることに、失業保険の適用期限の延長(現行の最長1年から、2、3年にする)の話があります。これについて無期限とか無条件いう意見もありますが、それでは私は甘すぎると思います。次の仕事を得るのに、新しい技術の習得のため一生懸命勉強してますという条件をつけないといけないのではないかと思うのです。努力されている方には、相応のセーフティネットで支え、努力してない人は遠慮してもらうというメリハリが必要だと思います。
もう一つは、転職や再就職での雇用ミスマッチを解消するため、新たな仕事を得るために自分の能力を別の分野で高める、そのための研修を国の費用をかけて行うことです。私は、これについては大賛成です。今の日本にはまだまだ終身雇用という考えが根強く残っております。しかし、これからのわが国の経済の立て直し、外科手術を行っていくには、今まで機能してきた制度ではうまくいきません。これからは、年功序列賃金制から能力重視の賃金制に変えていく必要があります。このような雇用慣行の見直しには、かなり意識して政府や諸機関が音頭をとっていくことが必要であります。