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F:よく分かりました。TMD、NMDは結局同じシステムで、統合的に運用しないと意味がないということだと思います。そうであればこそ、今申し上げたように日本の集団的自衛権の行使ということを、憲法上限定的であっても許すという憲法改正をしなくてはいけないと思いますが、問題提起としては極めて時期を得た、タイミングのいいことだと思っております。ただこれが、冷戦構造の中の国内の右左の対立に火をつけないように、慎重に運んでいく必要がある。それと、今お話を聞いていると、日本に配備されるかもしれないTMDについては、全部米軍でやってくれ。在日米軍でやってくれ。そうすれば全く集団的自衛権の行使は関係なくなるというちょっとずるい考えもあるんですよね。ただそれをやっちゃうと、昔の核の傘の問題を含めた昔の議論に戻っていくような感じがして、日本としての、国としての主体性がガタガタしてしまうような感じがするわけです。日本としてきちんと主権と主体性をもって、このTMD、NMDの問題に対応していくことが必要じゃないかと思っております。それともう1つ、昨年アーミテージさんがまだこの役職に就く前に、彼を中心として対日あるいはアジア政策、特に防衛の政策に関する提言を取りまとめた「アーミテージ・レポート」というのがあって、在日米軍、特に沖縄に展開している米軍海兵隊をはじめとする部隊を、今後どう運用すべきか、あるいは在日米軍の規模をどうするか?ということについても多少触れられていたと思います。いつまでも在日米軍の数が、これからも絶対に減らさないんだとか、兵力も全く変えないんだということではない。やはり国際情勢、特にアジア情勢の変化ということによって、在沖縄米軍の規模もかなり柔軟に考えていくべきではないのかという、たいへん現実的な話を書いてもらったんじゃないかと思っております。それから、確かマイクもアメリカ海兵隊について、削減することは将来可能ではないかということを、かなり早い段階で議論して、日本の防衛関係者も注目をしてたと思っているのですが、沖縄の米軍の状況とこれから将来の考え方を教えていただきたいと思います。 M:「アーミテージ・レポート」で非常に注目する点は、1つは集団的自衛権の行使ですが、もう1つは、在日米軍の規模について非常に柔軟な宣言をしてるんです。それは、削減するということではなくて、今まで4万7千人体制を維持すべきで、数で示すとういうことを止めるべきだとはっきり言ってます。それよりも、国際情勢が変わって、そしてまた軍事技術が進歩すれば、それにうまく柔軟に対応すべきだと強調しております。アーミテージさんは、1995年9月の少女暴行事件のあと、沖縄の負担をできるだけ軽くすべきだということを、早い段階で強調してたし、普天間を返すべきだということを言ってました。そういう意味で、彼はわりとタカ派ですが、特に沖縄県民の負担を非常に敏感に考えてると思います。私はこの1、2年でこれが実現するということは、ありえないと思います。特にこの間、海南島の衝突事件がありましたので、今、政治的に海兵隊を削減するということは、ブッシュ政権は言えないと思います。しかし、今の段階では、ブッシュ政権は包括的な軍事的レビューを行っています。世界規模でアメリカのプレゼンスの効率化を進めなければいけないということで、抜本的に変える可能性が十分あるんです。そのレビューが終わった段階で、東アジアにおける軍事力の配備を見直して、そしてそこから、在日米軍、または沖縄にいる米軍の規模を見直す可能性が十分あります。ですから、それを実現するために、日本がかなりの程度の役割分担や、積極的にアメリカの支援をするということをすれば、もっとしやすくなるわけです。しかし、日米防衛協力のほうは全然進まないで、削減して欲しいと注文だけだったら、どう言ってもアメリカでは、対応しにくい状態になると思います。来週、沖縄の稲嶺知事がワシントンD.C.に行きますが、最新情報ではアーミテ―ジさんは稲嶺さんと会って、率直な意見交換をするみたいなので、アーミテ―ジさんを日本は大切にしなければいけないと思います。
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