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〜北朝鮮に強硬なブッシュ大統領〜
次の日、金大中大統領がホワイトハウスに来た時に、コーリン・パウエルが横に座っていたのですが、ブッシュ大統領は、弾道ミサイル交渉は今のところ続ける気持ちはありません。そして太陽政策に対して、冷たい態度を表明しました。はっきりとパウエルと大統領の考え方が違うということが明確だと思います。なぜブッシュ大統領は金大中の太陽政策に対して冷たい態度をとっているかとすれば、これは3つの理由があると思います。1つの理由は、北朝鮮の「ゆすり政策」に対してあまり左右されないほうがいい。もっと強硬な姿勢をとるべき、それが1つの理由になります。第2の理由は、もし弾道ミサイル交渉があまり進むことになりますと、ブッシュ政権が一番強調している、いわゆるNational Missile Defense、本土ミサイル防衛構想の最大の理由がなくなる訳です。ですから、そうなりますとNMDを推す理由が消えてなくなる。そういう懸念がある訳です。そして第3の理由は、もし弾道ミサイル交渉が進んで、そして南北対話がかなり進んだ場合、多分北朝鮮と韓国は平和宣言を結び、サインするんじゃないかと、そういう懸念があるのです。私から見れば、平和宣言ということは非常にいいことだと思いますが、しかし一番アメリカ政府が懸念していることは、平和宣言によって、ほんとに平和になったという錯覚がおこって、韓国の中でアメリカの軍隊は引き上げろという圧力がますます強くなる。ですからそういう意味で、太陽政策に対してブッシュ政権は、非常に慎重な態度を示していると思います。

〜好転する日米同盟関係〜
こういう対中政策とか対朝政策をみますと、日本にとってどういうような意味があるかとすれば、3つのことが言えると思います。1つは、クリントン政権のときに中国を重視して日本を軽視したという傾向が今回は一切ないということで、日本は安心できると思います。たくさんの知日派が揃ってますので、日本をパスして他の国と連携するということは考えられません。日米同盟がアメリカの対東アジア政策の機軸ということは、それははっきりしていると思います。そして第2には、ブッシュ政権が対朝政策に対して慎重な態度をとっているということは、多分日本にとっても安心させる要素があると思います。私から見れば、最近日本の北朝鮮に対する態度は、非常に厳しくなりまして、弾道ミサイル問題だけでなくて拉致問題もありますので、クリントン政権があまりにも早く北朝鮮と手を結ぶことになりますと、日本の主張が反映されないんじゃないかと心配があったと思います。そういう意味で、ブッシュ政権の政策の方向性は日本にとっては、非常にプラスかもしれません。そして第3は、日米安保体制について非常に柔軟な体制をとる可能性が十分あります。

〜アーミテージ・レポートの示すもの〜
結構有名になった「アーミテージ・レポート」、去年10月に発行された、共和党や民主党の人たちが集まって勉強会からでた結果ですが、できるだけ日本とアメリカがマチュアーなパートナーシップをつくりだすべきだという内容で、これからの日米関係の青写真みたいなものがあります。その中では、日本がもっと防衛協力のガイドラインを実践したり、弾道ミサイル防衛システムの協力、そしてまた、集団的自衛権を行使できるように憲法改正を望むと、そういうようなことを主張されてます。それだけでなくて沖縄問題でも、アメリカはもっと柔軟な姿勢をとるべきだということで、日本にとっては非常にプラスだと思います。そういう意味で、ブッシュ政権の対東アジア政策は非常に日本が歓迎すべきものだと思います。

〜日米同盟の懸念〜
しかし、私は3つの理由で、ちょっと心配することがあります。1つは、ブッシュ政権のほうが日本を同盟国として重視しているのですが、私が心配しているのは、今の日本の政治状況で、防衛問題に取り組む政治の意志がどれだけあるかという疑問です。ブッシュ政権の期待に応えられないんじゃないか。またこの間の、田中外務大臣がアーミテ−ジさんとも会わないということで、ブッシュ政権これだけ知日派が揃っているんだけど、アメリカと一緒に同盟を強化しないというふうに受けとめられ、対日批判が高まる可能性が十分あります。そして第2の心配は、もしブッシュ政権が対朝政策で前に進まない場合は、2003年頃に北朝鮮のほうがもっと強硬な政策に切り替える可能性があります。2003年頃に太陽政策が成果を上げることができなかったら、朝鮮半島では軍事的衝突の可能性が十分ありうると思います。そうなりますと日本がアメリカと一緒に、また韓国と一緒に対応できるかできないかということを問われると思います。

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