〜海南島事件と強硬派の高まり〜
この間、海南島の近くでアメリカの偵察機と中国の戦闘機が衝突して、11日間非常に緊張が高まっていたのです。しかし最後には、アメリカは非常に緩やかに中国の主張を取り入れて、パウエル国務長官が、中国のパイロットが行方不明になったことに対して、“We
are very very sorry.”とお詫びの言葉を示した。それによって24人のアメリカの兵士が戻ってくることができたと思います。共和党の穏健派が指導力を握っていたから、そういう政策がとれたと思います。しかし、その出来事の後、逆に共和党の強硬派の発言が強まったという結果になっております。中国政府からすれば、11日間だけであっさりと24人のアメリカの兵士を帰したということで、中国は非常にアメリカの言い分を取り入れたというように解釈していると思います。しかし、アメリカでは対照的に、11日間も、国に帰れない状態に置いていたということは、けしからんという意見が多数あります。ですから結果的に、ワシントンでは、対中強硬路線の政策転換を求める圧力が益々高まってきております。
〜台湾への武器供与〜
その後、私がアメリカを発って日本に向かうちょっと前に、台湾への武器売却パッケージが発表されました。私もそれを非常に注目していたのですが、予測どおりブッシュ政権はイージス・システムの売却を控えました。しかしその替わりに潜水艦を台湾に与えるというようなパッケージだったのです。考えればこれは非常に中庸的な政策だったと思います。穏健派の限定的なengagement政策と封じ込め政策の間です。アメリカの評論家では、この政策は冷静な政策と評価しているのですが、中国では非常に納得しないで、逆に批判しております。特に潜水艦については、通常攻撃的な武器であるということで、凄く批判しております。そして、この武器のパッケージは今までで一番大きい,最大のarmy
sell packageで、1980年の米中共同コミュニケに反していると中国は非常に苛立っております。いまのところ中国はどういうような反応をするかは、はっきりとしていないのですが、多分否定的な反応があると思います。
〜寛容政策から封じ込め政策への漂流〜
これだけで中国が苛立つのだけれど、またそれ以上に、ブッシュ大統領がテレビのインタビューのときに、「もし台湾が攻撃されたら、ブッシュ大統領はどういう措置をとるか?」と聞かれたとき、ブッシュ大統領が「台湾を防衛するために、できるだけのことをやる。」と。アメリカからすればそれは当然のことだけれど、中国からみれば今まで米中関係の根本であった、「一つの中国」の概念を放棄するようになるんじゃないか、そういう恐れがあります。私が非常に心配しているのは、中国の苛立つような政策をとって、そしてまた、中国がそれに反応して、アメリカのタカ派の影響力が益々強くなってきて、徐々に寛容政策から封じ込め政策まで漂流する可能性が十分あります。
〜対朝政策に穏健なパウエル国務長官〜
時間があまりありませんから、北朝鮮政策に移りますと、今の所まだブッシュ政権の対朝政策は、はっきりしておりません。しかし、クリントン政権のときに、今ブッシュ政権に入っている高官たちは、さんざんクリントンの対朝政策を批判しておりました。例えば、1994年のジェノバ合意、米朝合意は、非常に北朝鮮の脅しに左右された点を徹底的に批判しておりました。しかし今のところは、ブッシュ政権がジェノバ合意を放棄するという傾向はみえません。しかし問題はどれくらい、金大中の太陽政策を支持するか、そしてまた、いつ弾道ミサイル交渉を再開するか、それが非常に注目するところですが、今のところはっきりしないのです。しかし、中国政策と同じ様にブッシュ政権の中で2つの意見があると思います。1つの意見は穏健な政策で、それはコーリン・パウエルが一番穏健な政策を支持しているのですが、金大中が訪米する直前に記者会見で、パウエル国務長官が、「クリントン政権が始めた弾道ミサイル交渉は続ける意志がある。」とはっきりと言っていました。ですから、クリントン政権の政策を継続するということを、公に話しました。