〜ブッシュ政権の外交政策の変化〜
ですから、選挙戦の時と大統領を経験してからの政策をみますと、かなりのギャップがありますので、必ずしも、選挙戦の発言を分析するだけでは、不十分だと思います。ですから、ジョージ.W.ブッシュの政権では、選挙戦の時の発言と実際の政策では、どれだけギャップがでてくるかことは、これからじっくり見なければいけないと思います。私が考えるに、多分100日しか経ってないので、実際どういう政策をとるかということを予測するのには、早すぎると思います。多分、多くの事態に左右されて、ブッシュ政権の政策が展開されると思います。
〜知日派ばかりの外交担当者〜
私がブッシュ政権の東アジア政策を分析するときに、最初に注目するところは、どういう人を政権にもっていってるかということだと思います。今の所は、クリントン政権と比べたら、ブッシュ政権の人事の方がかなり遅れているのです。まだ、大統領自身が埋めてないポストがたくさんあって、また、任命されていても議会の承認がまだされてない人たちも数多いと言えると思います。しかし、その中でも東アジア政策については、外交チームが完成していると思います。例えば、国務省において、すでに船田先生がおっしゃったリチャード・アーミテージが国務副長官で今活躍しております。そして、今週来日しておりました。そして、東アジア太平洋の担当の国務次官補はジェイムズ・キャリーでちょうど先々週議会の承認を受けました。国防総省では国防副長官であるウォルフヴィッツがおります。そして、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)では、アジア外交担当上級部長のトーケル・パターソンが、今忙しく活躍しております。そして、トーケル・パターソンの直属部下の日本部長は、私の親友のマイケル・グリーンです。大体こういうチームで、今のところ対東アジア政策が決まっていくと思います。この人事を見ますと、一番の共通点は、全員知日派です。日本との交流も深く日本の経験も深い人々です。またリチャード・アーミテージとかウォルフヴィッツは、レーガン政権で非常に重要なポストについた人々です。クリントン政権では、対東アジア政策を握っている人たちは、ほとんど中国の専門家で、中国語を話せて中国を専門に研究していた人だったのです。あまりにも知日派がそろっていますので、たびたびワシントンD.C.の日本大使館の外交官と話す機会がありますが、大使館の方々が、「知日派がそろって非常に結構だけど、中国の専門家はどこにいるのか」と非常に心配する、という皮肉みたいなことです。
〜矛盾のあるブッシュ政権の対中政策〜
ブッシュ政権でこれから問題になる政策は、対中政策だと思います。私はブッシュ政権の対中政策では、非常に矛盾があると思います。人事の面では中国という国は、それほど重要な国ではないということを示していると思います。知日派が完全にそろっているのだけど、中国の専門家は今のところ誰もいないのです。たった1人で、その1人の人は、このヘレテージ財団の研究員であったスティーブン・ゲイツという方ですが、彼はチェニ−副大統領の補佐官として務めます。しかし、大統領補佐官の中では中国の専門家は1人もおりません、そういう意味で中国を軽視しております。人事面では。しかし、政策面では中国は戦略的な競争相手、戦略的な競争相手だったら、重要な国だと思います。ですから、そういう意味でブッシュ政権では、人事と政策面では、ちょっと矛盾があると思います。