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元政会春期勉強会 講師 船田 元
〜東京プリンスホテル〜

平成15年4月4日

 私も浪人生活始めましてもう早いもので2年8ヶ月経ってしまいました。大体衆議院の解散の期間は平均しますと、2年7ヶ月位という風に言われています。勿論ある時は半年で解散したときもあります。あるいは任期満了の選挙という事もございました。全部ひっくるめて平均2年7ヶ月という事です。今が2年8ヶ月ですからもうそろそろ来てもおかしくない、と思っているわけですが、なかなか解散の機運にはならないその一つには、今進行中のイラク戦争の行方、これがある程度目途がつかないと解散が出来ない。それからもう一つ、やはり現在の景気低迷の状態。三月の年度末の株価が7900円台という事で各企業の決算の状況をポイントを悪くしてしまっております。景気の足を引っ張っている訳で、こういう状態が続いている限りなかなか国民世論として解散総選挙というマインドになっていかない。もう少し、景気の先行きに明るさが感じられなければなかなか衆議院解散に踏み込めない、これもまた事実ではないかと思っております。

 主にその2つの理由によって衆議院の解散は小泉さんは、自分の9月の総裁選挙までは衆議院選挙無いよ、と言っておられます。ただ、総理大臣が嘘を言っていいのは解散の時期だけだと言われておりますので、あるいは小泉さんも嘘を言っているかもしれません。例えば9月に小泉さんがもし自分が総裁を続けられないという状況がはっきりしてきた場合には、やぶれかぶれだという事で9月前に解散に打って出て自分の首をつなげる、その為の解散をやってしまうのかもしれません。しかしその可能性は2割、せいぜい3割程度の確率ではないかと思います。あとはやはり今年の暮れあたりですね、この秋の臨時国会で補正予算をテコにして解散の機運を盛り上げ、そして解散になっていくとなれば、11月の末から12月という可能性も3割程度あるのではないかと思います。残りの確率はやはり任期満了です。来年の6月25日がちょうど4年目という事になります。来年の7月末が参議院議員の6年目にあたるわけですので、参議院選挙とのダブルという事も当然、 考えられます。ダブル選挙になりますと、自民党にとってみると、有利に運ぶという事が過去の例としてありましたので、それもかなりの確率であるのではないか、4割程度あるんじゃないかと考えております。私としては浪人生活に早く終止符を打ちたい、という気持ちで一杯ですが、こればかりは私の意志に関わらず起こることなので、後は天に任せてその時を待つしかないと考えております。今度こそ負けられない選挙でございますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて私からは3つほどお話を申し上げたいと思います。一つはやはりイラク戦争。これをどう我々は捕らえていくべきか、あるいはこれからの行方はどうなっていくのか。毎日毎日テレビをひねればニュースのほとんどの時間はこのイラク戦争に費やされておりますので、もううんざりしている方もおられるかもしれませんが、私の見方をちょっと御披瀝をしてご参考になればという気持ちでおります。2つ目にはやはり経済危機。この危機を乗り切るために何をすべきか、多くの政治家あるいは経済評論家が色々言ってます。経済というものは難しいのですが、難しい中でも私としても言わざるを得ないことがございますので、お聞きいただければと思います。そして最後にお話申し上げたいのは、足元の話ではなく、少しこれから先の話をさせて頂きたい。ただ先の話と言いましてもあまり薔薇色ではありません。辛い話になるかもしれません。でも、それを乗り越えればその先には日本の新しい姿が描けるかも知れません。その3つに分けまして順次話をして参りたいと思っております。

 それでは最初にイラクの情勢でございます。私は、自民党の外交部会長というのを1990年から1992年までやっておりましたが、その真っ最中に湾岸戦争がございました。もう10年以上前の事になります。あの湾岸戦争では実際の戦闘は約1ヵ月という事で終結をいたしました。バグダットを始めとして、当時はフランスも参戦しておりましたので米英仏等による空爆が約3週間程度行われました。そして、この後地上戦はわずか100時間で戦闘が終了いたしました。ですから、犠牲者は双方に出たわけではありますが、近代戦争という中では比較的少なくて済んだ、という状況でございました。ところが、今回のイラク戦争は全然様相を異(こと)にしております。空爆だけと言う期間は最初の3日間だけでございました。3日目には早くも地上戦が始まっております。クウェート国境を越えて米英軍がバスラをはじめとして南から北上を始めたわけであります。現在はバグダット近郊にまで達しておりまして、昨日までの情報(平成15年4月3日)では30km圏に入った、あるいは、バグダッドの国際空港を制圧したというような報道が昨日はございました。やはり今回特徴的なのは、まさに地上戦が中心であるという事、そしてアメリカは、今回こそフセインを打倒する、フセインの首を捕るという事が最終の目的であります。
 前回の湾岸戦争では、フセインを打倒するという事は必ずしも明確ではありませんでした。というのは、前回の湾岸戦争のきっかけはイラクのクウェート侵略があったからであります。国連決議ではとにかく占領されたクウェートを開放するという為にアメリカを始めとする多国籍軍に対して武力行使を容認する。それに基づいて多国籍軍が軍事行動を行った。クウェートにいるイラク軍を排除するという明白な目的がありました。アメリカとしてはそういうよからぬ事を起こしたフセインを出来れば追い詰めたい、そのため多少地上戦を延長しようという声がホワイトハウスの中にもございましたし、また、ペンタゴンの中にもございました。今は国務長官になっているコーリン・パウエルさんは、湾岸戦争当時は参謀総長でございましたが、確かにアメリカの中では、タカ派の中でも穏健派ですから、パウエル参謀総長は最後のところで「フセインをやっつける所までは国連は許していない。アメリカがもしそういう行動をとれば国際社会からの批判を浴びてしまう事になる。」と今のブッシュ大統領のお父さんに進言をして途中で撃ち方止めにした、という経緯があったわけです。しかし、「あの時、フセインを見逃してしまった事が10年以上経てここに至ってしまったんだ。」とパウエルさんも途中で止めてしまったことに対する負い目を感じております。ですから今回は国務長官と立場は変わりましたけれども、パウエルさんの立場からしても、やはりここは10年以上前の轍(てつ)を踏まないようにフセイン打倒まで出来ればやりたいという気持ちで今強く望んでいる状況だと思います。
 もう1つは、戦争の目的が今後長期化することによって不明確になっていく、あるいは戦争目的が多様化してしまう懸念があるのではないか、ということであります。本来、今回のイラク戦争についてはアメリカ、イギリスの言い分ではありますが大量破壊兵器をとにかく見つけてそれをなんとしても廃棄させる、という事です。国連の査察が行われてまいりました。しかし、そういう通常の核の査察、大量破壊兵器の査察ではどうしても限界がある、ここは武力行使に訴えながら大量破壊兵器の根絶をやらざるを得ないということでアメリカ、イギリスは踏み切ったわけであります。また、フセイン政権を打倒しなければ大量破壊兵器は無くならない、という理屈です。戦争の目的はその1点に集約されております。しかし、戦争が長期化するにつれてアメリカはいろんな事を言い始めております。1つはフセイン後のイラクを民主化させることが大事なのだという事です。民主化ということはどういうことか、それは確かにフセインの呪縛からイラクの民衆を解くという事もあるでしょう。しかし、普通はどこからも圧力を受けないで自由な国民による選挙が行われ、その総意として大統領が選ばれ、そして議員が選ばれて議会制民主主義が行われるというのが民主化の定義でございす。イラクにもやはり同じ定義があてはまるわけでございます。ところが、この自由な選挙をイラクでやろうとすれば、国内には2つの大きな政治勢力があります。いずれもイスラム教に基づいての、宗派に基づく政党です。宗教と政治が非常に密接に絡み合っているわけであります。1つはスンニー派という穏健派です。もう1つがシーア派というやや強硬派です。イスラム教の教義を非常に大事にする、そういう意味の強硬派です。フセイン現在大統領はスンニー派から推(お)されて大統領の座に就いている状況にあります。もし、民主化を行う、そして自由な選挙をやった場合にはシーア派のほうが数が多いので、自由選挙の結果としてシーア派政権が、間違いなく誕生するという事になります。フセインという特殊な人間は排除されるとしても、強硬派のシーア派政権が誕生します。それはそれで私は民主化という事ですから、国民が選べばそれはそれでいいのだと思います。しかしながら、それは果たしてアメリカが望んでいるイラクの民主化なのかどうか、そこにアメリカの思惑との違いが表れる。そうするとアメリカとしてはやはり、自由な選挙ではなくて、ある程度制限をした選挙、あるいは選挙そのものに圧力を加えなければいけないという、新たな過ちを犯してしまうかもしれない。イラク戦争後の状況に大きな影を落とすのではないかという心配があります。戦争後のイラクをどうするんだ、ということについてはアメリカに任せるのではなく、国際社会がもっと関心を持って対応するべきであるというふうに思っています。

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